マイコプラズマ感染症は、気管支炎や肺炎といった呼吸器症状を引き起こすことがあり、特に「マイコプラズマ肺炎」は、非定型肺炎の一つとして知られています。このマイコプラズマ肺炎の診断において、血液検査は臨床症状や画像検査と並んで重要な役割を果たします。マイコプラズマ肺炎の症状は、乾いたしつこい咳が長く続くことが特徴的で、発熱、頭痛、倦怠感などを伴うこともあります。しかし、これらの症状は他の呼吸器感染症と区別がつきにくい場合も少なくありません。胸部X線写真やCT検査では、特徴的な陰影が見られることもありますが、必ずしも典型的でない場合や、初期には異常が見られないこともあります。そこで、血液検査による抗体測定が、診断の補助として役立ちます。マイコプラズマ肺炎が疑われる場合、血液検査では主にマイコプラズマに対するIgM抗体やIgG抗体の値を調べます。IgM抗体は感染初期から上昇するため、最近の感染を示唆する手がかりとなります。また、急性期と回復期のペア血清で抗体価の有意な上昇が確認されれば、より確実な診断につながります。なぜマイコプラズマ肺炎の診断が重要かというと、治療に用いる抗菌薬の種類が通常の細菌性肺炎とは異なる場合があるからです。マイコプラズマは細胞壁を持たないため、細胞壁合成を阻害するペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は効果がありません。マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系といった種類の抗菌薬が有効とされています。したがって、マイコプラズマ肺炎であると正確に診断することで、適切な抗菌薬を選択し、効果的な治療を行うことが可能になります。血液検査は、この抗菌薬選択のための重要な情報を提供するのです。ただし、血液検査の結果が出るまでには数日かかる場合があり、また抗体が上昇するまでにも時間がかかるため、臨床症状や画像所見からマイコプラズマ肺炎が強く疑われる場合には、検査結果を待たずに経験的に治療が開始されることもあります。いずれにしても、長引く咳や発熱などの症状があり、マイコプラズマ肺炎が疑われる際には、医師の診察を受け、血液検査を含む必要な検査を受けることが、早期の適切な治療と回復への近道となります。