マイコプラズマ感染症が疑われる場合、その診断を補助するために血液検査が行われることがあります。この検査は、体内にマイコプラズマが侵入したことに対する体の免疫反応を調べるもので、主に「抗体検査」が行われます。私たちの体は、異物であるマイコプラズマが侵入すると、それに対抗するために特異的なタンパク質である抗体を作り出します。この抗体を血液中から検出することで、マイコプラズマに感染しているか、あるいは過去に感染したことがあるかを判断する手がかりとします。血液検査で測定される主な抗体には、IgM抗体とIgG抗体があります。IgM抗体は、感染の比較的早い時期(通常は感染後一週間程度)から作られ始め、数週間から数ヶ月で減少していくため、最近の感染を示唆する指標とされます。一方、IgG抗体は、IgM抗体よりも少し遅れて作られ始め、長期間にわたって体内に残ることが多いため、過去の感染歴を示す指標となります。より確実な診断のためには、「ペア血清」という方法が用いられます。これは、症状が出始めた急性期と、その二週間から四週間後の回復期の二回にわたって採血を行い、それぞれの血清中の抗体価(抗体の量)を比較するものです。急性期に比べて回復期の抗体価が四倍以上に上昇していれば、最近マイコプラズマに感染したと強く疑われます。このペア血清による診断は、特にIgG抗体価の変動を見る場合に有用です。ただし、抗体検査の結果の解釈には注意が必要です。例えば、IgM抗体が陽性であっても、過去の感染でIgM抗体が長期間残っている場合や、他の感染症との交差反応(似たような微生物に対する反応)の可能性も否定できません。また、抗体が作られるまでには時間がかかるため、感染初期には検査をしても陰性となることもあります。そのため、血液検査の結果だけでなく、臨床症状、周囲の流行状況、他の検査結果(胸部X線写真など)を総合的に判断して診断が下されます。マイコプラズマの血液検査は、診断の一助となる重要なツールですが、その結果の持つ意味を正しく理解することが大切です。
マイコプラズマ感染を調べる血液検査とは