30代の会社員、Aさんの事例を紹介します。Aさんは半年ほど前から、会議の前や通勤電車の中でたびたび過呼吸を起こすようになりました。当初は市販の鎮静剤などで誤魔化していましたが、次第に発作の頻度が増え、ついに会社へ行くことさえ困難になり、当院を受診されました。Aさんは「自分は精神的に弱いから過呼吸になるのだ」と思い込み、非常に自分を責めておられました。しかし、当院で実施した包括的な検査により、意外な事実が明らかになりました。まず内科的な血液検査を行ったところ、Aさんは重度の鉄欠乏性貧血であることが分かりました。貧血によって体内の酸素運搬能力が低下していたため、少しの運動や緊張でも体が酸素不足を感じ、それを補おうとして過呼吸が誘発されやすい身体的条件が揃っていたのです。さらに、問診を進めると、Aさんは睡眠時無呼吸症候群の疑いもあり、夜間の睡眠の質が著しく低下していることが判明しました。つまり、Aさんの過呼吸は単なる精神的な問題だけではなく、身体的な疲弊が土台となって引き起こされていたのです。私たちはまず、貧血の治療として鉄剤の投与を開始し、同時に自律神経のバランスを整えるための漢方薬を処方しました。それと並行して、心理療法士によるカウンセリングを行い、Aさんが抱えていた仕事上の過度な責任感や、休むことへの罪悪感を少しずつ紐解いていきました。治療開始から3ヶ月が経過する頃には、Aさんの血液データは劇的に改善し、それに伴って過呼吸の発作もほとんど見られなくなりました。Aさんは「病院で検査を受けるまでは、すべて自分の性格のせいだと思っていました。原因が分かって本当に救われました」と晴れやかな表情で語ってくれました。この事例から学べるのは、過呼吸の原因は決して一つではないということです。病院は、多角的な視点から症状を分析し、最適な解決策を見つけ出すための場所です。血液検査や生理学的検査、心理検査を組み合わせることで、目に見えない不調の原因が可視化され、より効果的なアプローチが可能になります。もしあなたが過呼吸を繰り返して悩んでいるなら、一度立ち止まって病院で全身のチェックを受けてみてください。そこには、自分一人では気づけなかった回復へのヒントが隠されているはずです。
過呼吸を繰り返す原因を病院の検査で突き止めた事例