あれは猛暑日が続いていた8月の午後、地域の少年サッカー大会の審判をしていた時のことでした。試合も終盤に差し掛かった頃、1人の選手が急に立ち止まり、ふらふらとピッチに膝をつきました。顔は真っ赤で、異常なほどに汗をかいています。私はすぐに試合を中断し、救護班を呼びました。これが私の経験した、熱中症の応急手当の緊迫した現場でした。まず私たちは、その子を抱きかかえて日陰にあるテントの下へと運びました。コーチがすぐさまユニフォームの襟元を広げ、ソックスやスパイクを脱がせて身軽にしました。本人に声をかけると、辛うじて返事はありましたが、めまいがひどいと訴えていました。私はすぐ近くの自販機で冷えたスポーツドリンクを数本購入し、まずは本人の意識を確認しながら少しずつ飲ませました。このとき、一気に飲ませようとすると嘔吐の原因になるため、一口ずつゆっくりと進めるのがポイントだと後に医師から教わりました。同時に、他のスタッフがクーラーボックスから氷嚢を取り出し、首筋や脇の下に当てて冷却を開始しました。最も効果があったと感じたのは、タオルを冷水に浸して全身を拭きながら、うちわで絶え間なく仰ぎ続けたことです。皮膚の表面が冷やされるだけでなく、蒸発する際の冷気が体温を奪っていくのが目に見えて分かり、次第に本人の顔色が落ち着いていきました。応急手当を開始して15分ほど経った頃、ようやくその選手は意識がはっきりし、立ち上がろうとするまでになりました。しかし、熱中症は一度落ち着いたように見えても、後から急変することがあるため、そのまま病院へ搬送して医師の診断を仰ぎました。幸い軽症で済みましたが、もしあの時、日陰へ運ぶのが遅れていたら、あるいは冷却の手順を間違えていたらと思うと、今でも背筋が凍る思いです。この体験から学んだのは、熱中症の応急手当に迷いは禁物だということです。少しでも様子がおかしいと感じたら、すぐに活動を停止させ、体を冷やし始めることが鉄則です。また、経口補水液などの備えが現場にあるかどうかが、応急手当の質を大きく変えることも痛感しました。それ以来、私は夏のスポーツイベントに参加する際は、必ず冷却キットと経口補水液を個人でも持参するようにしています。誰かが倒れたとき、自分に何ができるかを知っていることは、大きな自信になります。熱中症の応急手当は、決して難しい技術ではありません。落ち着いて、一つひとつの処置を確実に行うことが、最良の結果を生むのだと確信しています。
現場で役立つ熱中症の応急手当体験記