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マイコプラズマ診断と血液検査の意義
長引く咳や発熱。もしかしたらマイコプラズマ感染症かもしれません。この病気は、一般的な細菌とは異なるマイコプラズマという微生物によって引き起こされ、特に子供や若い世代で流行することがあります。マイコプラズマ感染症の診断において、血液検査は重要な役割を果たします。なぜなら、マイコプラズマは細胞壁を持たない特殊な微生物であるため、通常の細菌感染症で用いられるペニシリン系やセフェム系の抗生物質が効きにくいという特徴があるからです。そのため、正確な診断に基づいた適切な抗菌薬の選択が治療の鍵となります。血液検査では、主に体内にマイコプラズマが侵入した際に作られる「抗体」を測定します。抗体にはいくつかの種類があり、感染の初期に上昇するIgM抗体や、少し遅れて上昇し長期間持続するIgG抗体などがあります。これらの抗体の値を調べることで、現在マイコプラズマに感染しているのか、過去に感染したことがあるのか、といった情報を得ることができます。特に、症状が出始めた急性期と、その数週間後の回復期の二度にわたって採血を行い、抗体価の変動を見る「ペア血清」による診断は、より確実性の高い方法とされています。急性期に比べて回復期の抗体価が著しく上昇していれば、最近マイコプラズマに感染した可能性が高いと判断されます。ただし、血液検査の結果だけで診断が確定するわけではありません。医師は、患者さんの症状、周囲での流行状況、胸部X線検査の結果などを総合的に考慮して診断を下します。血液検査は、その診断を補助するための有力な情報の一つとなるのです。マイコプラズマ感染症は、気管支炎や肺炎を引き起こすことがあり、症状が長引くことも少なくありません。適切な治療を受けるためには、まず正確な診断が不可欠であり、そのために血液検査が活用されていることを知っておくと良いでしょう。