おしりから鮮やかな赤い血が出たけれど、特に痛みを感じない。このような経験をすると、「たいしたことないだろう」「そのうち治るだろう」と安易に考えてしまいがちです。しかし、痛みがないからといって、その出血を放置するのは非常に危険な場合があります。なぜなら、痛みがない出血の中には、痔のような比較的軽いものだけでなく、大腸がんや大腸ポリープといった命に関わる可能性のある病気が隠れていることもあるからです。鮮血が出るということは、出血源が肛門に近い場所にあることを示唆しています。最も一般的な原因は、内痔核(いぼ痔)や切れ痔(裂肛)です。内痔核は肛門の内側にできる痔で、初期には痛みを感じにくく、排便時のいきみなどで出血することがあります。切れ痔も、軽度であれば強い痛みを伴わずに出血だけが見られることもあります。これらの場合は、生活習慣の改善や適切な薬物治療で改善することが多いです。しかし、問題は、大腸がんや大腸ポリープも初期には自覚症状が乏しく、痛みがないまま出血だけがサインとして現れることがあるという点です。特に、大腸がんの中でも肛門に近い直腸がんの場合、鮮血の便として症状が出やすいと言われています。大腸がんは早期に発見し治療すれば治癒率の高いがんですが、進行してしまうと治療が難しくなるため、早期発見が何よりも重要です。そのため、「痛みがないから大丈夫」という自己判断は絶対に避けなければなりません。その他にも、大腸憩室出血(大腸の壁にできた小さなくぼみからの出血)や虚血性大腸炎(大腸の血流が悪くなって炎症が起きる病気)などでも、痛みがあまり強くないか、全くない状態で鮮血が出ることがあります。これらの病気も適切な治療が必要です。では、このような症状に気づいたらどうすればよいのでしょうか。答えは一つ、速やかに専門の医療機関を受診することです。診療科としては、消化器内科または肛門科が適切です。医師は問診や診察、必要に応じて大腸内視鏡検査などを行い、出血の原因を正確に突き止めます。検査の結果、もし重大な病気が見つかれば早期治療につながりますし、痔などの比較的軽い病気であれば、適切な治療法や生活指導を受けることで症状の改善や再発予防が期待できます。痛みがないからと安心せず、おしりからの鮮血は体からの重要なサインと捉え、必ず専門医に相談するようにしましょう。
痛みなしのおしりからの鮮血、放置は禁物?