おしりからの出血は、誰にとっても心配な症状の一つです。特に、鮮やかな赤い血が出ているにもかかわらず、痛みを全く感じない場合、「これは何かの病気だろうか」「どの病院の何科に行けばいいのだろう」と戸惑う方も多いでしょう。まず、おしりからの出血を診療する専門科は、消化器内科と肛門科です。どちらの科を受診しても、適切な診断と治療を受けることが期待できます。消化器内科は、食道から胃、小腸、大腸、肛門に至るまでの消化管全体の病気を幅広く扱っています。一方、肛門科は、痔や肛門周囲膿瘍など、肛門とその周辺の疾患をより専門的に診療しています。鮮血で痛みがないという症状の場合、考えられる原因はいくつかあります。最も一般的なのは、内痔核(いぼ痔)です。これは肛門の内側にできる痔で、初期には痛みを感じにくく、排便時のいきみなどで出血することがあります。また、切れ痔(裂肛)も、ごく初期の浅い傷であれば、強い痛みを伴わずに出血だけが見られることがあります。これらの痔による出血は、多くの場合、生活習慣の改善や薬物療法でコントロール可能です。しかし、最も注意しなければならないのは、大腸がんや大腸ポリープといった重大な病気の可能性です。これらの病気も、初期には自覚症状がほとんどなく、痛みがないまま出血だけがサインとして現れることがあります。特に、肛門に近い直腸にできたがんやポリープは、便が通過する際に物理的な刺激で出血しやすいため、鮮血の便として気づかれることがあります。早期発見・早期治療が非常に重要なこれらの疾患を見逃さないためにも、専門医による診察は不可欠です。医療機関を受診すると、まず問診で出血の状況や既往歴、家族歴などを詳しく確認されます。その後、視診や触診、肛門鏡検査などが行われ、肛門周囲の状態を調べます。さらに精密な検査が必要と判断された場合には、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が勧められることもあります。この検査は、大腸全体の粘膜を直接観察できるため、ポリープやがん、炎症などを確実に診断するのに非常に有効です。痛みがないからといって自己判断で放置せず、おしりからの鮮血という体からのサインを真摯に受け止め、まずは消化器内科か肛門科を受診し、専門医の診断を仰ぐことが大切です。
鮮血で痛くないおしりの出血、何科へ行くべきか