長引く咳の原因となる病気は数多くありますが、その中でも「マイコプラズマ感染症」による咳には、いくつかの特徴的なサインがあります。これらの特徴を知っておくことは、早期に適切な医療機関を受診し、正しい診断に繋げるための、重要な手がかりとなります。まず、最も大きな特徴は、咳の「性質」と「持続期間」です。マイコプラズマの咳は、初期には「コンコン」という、痰の絡まない乾いた咳(乾性咳嗽)から始まることが多いです。しかし、病状が進行するにつれて、徐々に粘り気の強い痰が絡む、湿った咳(湿性咳嗽)へと変化していくこともあります。そして、何よりも特徴的なのが、そのしつこさです。熱などの他の症状が治まった後も、咳だけが3週間以上、時には一ヶ月以上にわたって、頑固に続きます。特に、「夜間から早朝にかけて悪化する」傾向が強く、激しい咳の発作で目が覚めてしまうことも、決して珍しくありません。次に、咳以外の「随伴症状」にも特徴が見られます。発熱は、微熱がダラダラと続くこともあれば、38度以上の高熱が出ることもあり、個人差が大きいです。また、初期には、比較的強い「頭痛」や「全身の倦怠感」を伴うことが多いのも、一つのポイントです。一方で、一般的な風邪でよく見られる、ひどい鼻水や、強烈な喉の痛みといった、上気道の症状は、比較的軽いことが多いと言われています。そして、診断の大きな手がかりとなるのが、「周囲の流行状況」と「感染経路」です。マイコプラズマは、主に、咳やくしゃみによる飛沫感染で広がり、学校や職場、そして家庭内といった、比較的閉鎖された空間で、集団感染を起こしやすいという特徴があります。潜伏期間が2~3週間と長いため、感染源が特定しにくいこともありますが、「家族や、職場の同僚にも、同じように長引く咳をしている人がいる」といった情報は、診断の非常に有力な材料となります。これらの特徴、つまり「頑固で長引く咳」「発熱や頭痛を伴う」「鼻や喉の症状は比較的軽い」「周囲にも同じような症状の人がいる」という、四つのピースが組み合わさった時、それはマイコプラズマからの強いメッセージかもしれません。
マイコプラズマの咳、特徴と見分け方