睡眠時無呼吸症候群は、初期の段階では自覚症状が乏しく、見逃されやすい病気の一つです。しかし、放置すると徐々に症状が進行し、生活の質を低下させるだけでなく、様々な合併症を引き起こすリスクもあります。早期発見・早期治療のためには、見逃しやすい初期症状に気づくことが重要です。まず、初期症状として現れやすいのが、起床時の軽い頭痛や頭重感です。これは、睡眠中の無呼吸や低呼吸によって脳が一時的に酸素不足になることが原因と考えられています。スッキリと目覚められず、なんとなく頭がぼーっとする感じが続くようであれば注意が必要です。また、睡眠時間は十分なはずなのに、日中に軽い眠気を感じたり、集中力が散漫になったりすることも初期のサインかもしれません。「最近、疲れやすいな」「仕事の効率が落ちたな」と感じる背景に、睡眠の質の低下が隠れている可能性があります。特に、以前は感じなかったような場面で眠気を感じるようになったら、一度立ち止まって考えてみる必要があるでしょう。いびきも重要な手がかりですが、必ずしも大きないびきをかくとは限りません。静かないびきや、時々呼吸が浅くなる程度の「低呼吸」が主体の場合、本人も周囲も気づきにくいことがあります。しかし、寝室を共にする人が「寝息が不規則だね」「時々、息苦しそうだよ」といった些細な変化に気づくこともあるかもしれません。夜間の頻尿も、見逃しやすい初期症状の一つです。睡眠中に無呼吸状態になると、胸腔内圧が変動し、心臓に戻る血液量が増加します。これにより、心臓から利尿ホルモン(ANP)が分泌されやすくなり、尿量が増えると考えられています。以前よりも夜中にトイレに起きる回数が増えたと感じたら、年のせいと片付けずに、睡眠時無呼吸症候群の可能性も疑ってみる価値があります。さらに、寝汗をかきやすくなることもあります。無呼吸状態から呼吸を再開する際に、交感神経が活発になり、発汗が促されるためです。原因不明の寝汗が続く場合は、睡眠の状態を確認してみると良いでしょう。これらの初期症状は、日常生活のちょっとした変化として現れるため、見過ごされたり、他の原因(加齢、ストレス、疲労など)と混同されたりしがちです。しかし、これらのサインに早期に気づき、専門医に相談することで、病気の進行を食い止め、より健康的な生活を取り戻すことが可能になります。