おしりから鮮やかな赤い血が出たけれど、痛みは全くない。このような場合、受診すべきかどうか、受診するなら何科が良いのか、迷う方もいらっしゃるでしょう。まず結論から言うと、おしりからの出血は、たとえ痛みがなくても医療機関を受診することが推奨されます。その理由は、痛みがない出血の中にも、放置すると進行してしまう可能性のある病気が隠れていることがあるからです。受診の目安としては、「初めて出血に気づいた時」あるいは「出血が少量でも数日続く場合」が挙げられます。一度きりのごく少量の出血であれば、硬い便による一時的な切れ痔の可能性もありますが、繰り返す場合や量が徐々に増える場合は注意が必要です。また、便に血が混じっている、便器の水が赤く染まる、トイレットペーパーに多量の血が付着するといった場合は、速やかに受診しましょう。特に、四十歳以上の方、過去に大腸ポリープを指摘されたことがある方、血縁者に大腸がんの方がいる方、便秘や下痢などの便通異常が続く方、体重減少が見られる方などは、より早期の受診が望ましいです。受診する診療科としては、消化器内科または肛門科が専門となります。消化器内科は、食道から大腸、肛門までの消化管全体の病気を扱います。肛門科は、痔や肛門周囲の病気に特化した診療を行います。どちらの科でも、おしりからの出血の原因を調べ、適切な治療方針を立ててもらうことができます。痛みがない鮮血の主な原因としては、内痔核(いぼ痔)や切れ痔(裂肛)の初期が考えられます。これらは比較的よく見られる良性の疾患ですが、治療せずに放置すると悪化することもあります。しかし、最も警戒すべきは、大腸がんや大腸ポリープです。これらの悪性疾患も、初期には痛みなどの自覚症状がなく、出血だけが唯一のサインであることがあります。早期発見・早期治療が極めて重要なこれらの病気を見逃さないためにも、専門医による診察が不可欠です。医療機関では、まず問診で出血の状況や既往歴などを詳しく確認し、視診や触診、肛門鏡検査などを行います。必要に応じて、大腸全体の精密検査である大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が勧められます。この検査により、出血の原因を正確に特定し、ポリープがあればその場で切除することも可能です。