マイコプラズマ感染症と診断された場合、自身の療養と共に、周囲の人々へ感染を広げないための配慮が、社会的な責任として求められます。マイコプラズマは、インフルエンザほど爆発的な感染力はありませんが、家庭内や学校、職場といった、閉鎖された空間で、長時間、濃厚に接触することで、ゆっくりと、しかし確実に感染が広がっていくという特徴があります。大切な家族や同僚を守るために、知っておくべき注意点を解説します。マイコプラズマの主な感染経路は、咳やくしゃみによって飛び散る、ウイルスを含んだ粒子を吸い込む「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で、目や鼻、口を触る「接触感染」です。感染力が最も強いのは、症状が出始めてから、約1週間から10日間程度と考えられています。この期間は、特に厳重な対策が必要です。まず、最も基本的で、かつ効果的なのが、「マスクの着用」と「咳エチケット」の徹底です。咳や、くしゃみをする際は、マスクの上からでも、ティッシュや腕の内側で、口と鼻をしっかりと覆い、飛沫の拡散を最小限に抑えましょう。次に重要なのが、「手洗い」です。咳やくしゃみを手で押さえた後や、鼻をかんだ後などは、石鹸と流水で、30秒以上かけて丁寧に手を洗いましょう。アルコールによる手指消毒も有効です。また、家庭内では、「物理的な距離」を保つ工夫も大切です。可能であれば、療養する部屋を分け、他の家族、特に、高齢者や、基礎疾患のある方、小さな子どもとの、不要な接触は避けるべきです。タオルや食器、コップなどの共用は、接触感染のリスクとなるため、絶対にやめましょう。そして、部屋の「換気」を、こまめに行うことも忘れてはなりません。一時間に数回、数分間でも良いので、窓を開けて、室内の空気を入れ替えることで、空気中に浮遊するウイルス濃度を下げることができます。職場への復帰のタイミングも、悩ましい問題です。マイコプラズマには、明確な出席停止期間の定めはありませんが、一般的には、抗生物質を飲み始めて、熱が下がり、激しい咳が治まってきたら、復帰が可能と判断されます。しかし、咳が長引く間は、マスクの着用を継続するなど、周囲への配慮を続けることが、社会人としてのマナーと言えるでしょう。