おたふく風邪、すなわち流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスの感染によって引き起こされる病気です。一般的には子供がかかるイメージが強いですが、成人、特に女性が感染すると、特有の症状や経過をたどることがあります。まず、潜伏期間は通常二週間から三週間程度とされています。この期間は無症状ですが、ウイルスは体内で増殖しています。初期症状としては、発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、食欲不振などが現れることが多く、風邪の症状と似ているため、この段階ではおたふく風邪と気づきにくいかもしれません。その後、おたふく風邪の最も特徴的な症状である唾液腺の腫れと痛みが生じます。主に耳の下にある耳下腺が腫れることが多いですが、顎の下の顎下腺や舌の下の舌下腺が腫れることもあります。通常は片側から腫れ始め、数日以内にもう片方も腫れてくることが多いですが、片側だけで終わる場合もあります。この腫れは発症後一から三日目にピークを迎え、徐々に引いていきますが、完全に元に戻るまでには一週間から十日程度かかることもあります。腫れに伴う痛みは、ものを噛んだり飲み込んだりする時や、酸っぱいものを食べた時に強くなる傾向があります。大人の女性の場合、これらの基本的な症状に加えて、高熱が続く期間が長かったり、全身倦怠感がより強く現れたりすることがあります。また、合併症にも注意が必要です。最も注意すべき合併症の一つに髄膜炎があります。これは、発熱、激しい頭痛、嘔吐などの症状を伴い、入院治療が必要となることもあります。頻度は高くありませんが、膵炎を起こすと、上腹部の激しい痛みや吐き気、嘔吐などが現れます。そして、女性特有の合併症として卵巣炎があります。下腹部痛や不正出血などの症状が見られ、不妊の原因になる可能性も指摘されていますが、実際に不妊に至るケースは稀とされています。その他、稀な合併症として、聴力障害(ムンプス難聴)が起こることもあり、これは片側の耳に永続的な難聴を残すことがあります。これらの症状の現れ方や程度には個人差がありますが、大人の女性がおたふく風邪にかかった場合は、子供よりも症状が重く、合併症のリスクも高まる傾向があることを理解し、早期に医療機関を受診して適切な指示を受けることが重要です。