大人がりんご病(伝染性紅斑)に感染した場合、その症状の現れ方は子どもとは大きく異なり、多くの場合より深刻な経過を辿ります。その全体像を時間の経過と共に理解しておくことは、過度な不安を和らげ適切な対応をとるための助けとなります。まずウイルスに感染してから症状が現れるまでの「潜伏期間」は比較的長く、10日から20日程度です。この期間は無症状です。そして潜伏期間を過ぎると突然インフルエンザ様の症状で発症します。これを「前駆期」と呼びます。具体的には38度前後の発熱や悪寒、頭痛、筋肉痛、そして大人のりんご病の最も特徴的な症状である激しい「関節痛」が現れます。この関節痛は手や足の小さな関節に左右対称に現れることが多く、朝起きた時の強いこわばりや腫れを伴います。このつらい前駆症状が3日から5日間ほど続きます。この段階ではまだ発疹は現れないため、多くの人は重い風邪やインフルエンザ、あるいは関節リウマチを疑います。そして前駆症状が少し落ち着き始めた頃、ようやく「発疹期」へと移行します。子どものような典型的な「リンゴの頬」はほとんど見られず、主に腕や脚、特に関節の伸側を中心に赤い斑点状の発疹が出現します。この発疹は数日経つと中心部から色が薄れ始め、まるでレースの網目模様や大理石の模様のように見える「レース状紅斑」という特徴的な見た目へと変化していきます。この発疹は強いかゆみを伴うこともあり非常に厄介です。さらにこの発疹は一度消えたように見えても、日光を浴びたり入浴や運動で体が温まったり、あるいは精神的なストレスを感じたりすると再び赤みがぶり返すという特徴があります。この出たり消えたりする発疹が1週間から時には数週間にわたって続くことがあります。関節痛も発疹と並行して長引くことが多く、完全に症状が消失するまでには全体で1ヶ月以上かかることも決して珍しくありません。
大人のりんご病、主な症状と経過