マイコプラズマ感染症の診断において血液検査は有用な手段の一つですが、万能ではなく、いくつかの限界も存在します。また、血液検査以外にもマイコプラズマを検出するための検査法があり、それらと組み合わせて総合的に診断が行われます。血液検査(抗体検査)の主な限界点としては、まず結果が出るまでに時間がかかるという点が挙げられます。特にペア血清による診断では、二度目の採血まで数週間を要するため、迅速な診断と治療開始には必ずしも適していません。また、抗体が産生されるまでには一定の期間が必要なため、感染極初期には検査をしても陰性(偽陰性)となる可能性があります。逆に、過去の感染により長期間抗体が残存している場合や、他の微生物との交差反応により、現在の症状とは無関係に陽性(偽陽性)と判定されることもあり得ます。これらの限界を補うため、あるいはより迅速な診断を目指して、他の検査法も用いられます。代表的なものに、咽頭拭い液や喀痰などを用いた「核酸増幅検査(PCR検査など)」があります。これは、マイコプラズマの遺伝子を直接検出する方法で、感度が高く、比較的早期から陽性となり、結果も数時間から一日程度で得られることが多いというメリットがあります。そのため、迅速な診断が求められる場合や、抗体検査では判断が難しい場合に有用です。ただし、PCR検査も万能ではなく、死んだ菌の遺伝子も検出してしまう可能性があるため、必ずしも現在の活動性の感染を示しているとは限りません。また、一部の医療機関でしか実施されていない場合もあります。その他には、「迅速抗原検査キット」も存在します。これも咽頭拭い液などを用いて、マイコプラズマの抗原を検出する方法で、短時間(十数分程度)で結果が得られます。しかし、PCR検査に比べると感度が低い場合があり、偽陰性の可能性に注意が必要です。このように、マイコプラズマ感染症の診断には、血液検査(抗体検査)、核酸増幅検査、迅速抗原検査といった複数の検査法があり、それぞれに長所と短所があります。医師は、患者さんの症状、年齢、重症度、検査の実施可能性などを総合的に考慮し、最適な検査法を選択したり、複数の検査を組み合わせたりして診断を進めていきます。
マイコプラズマ血液検査の限界と他の検査