おたふく風邪は、子供の頃に軽く済むことが多い感染症というイメージがありますが、大人の女性が罹患した場合、様々な合併症を引き起こすリスクがあり、注意が必要です。ムンプスウイルスによって引き起こされるこの病気は、唾液腺の腫れや痛みが主症状ですが、ウイルスは血流に乗って全身に広がるため、他の臓器にも影響を及ぼすことがあります。まず、最も頻度の高い合併症の一つが髄膜炎です。これは、ウイルスが脳や脊髄を覆う髄膜に感染して炎症を起こすもので、発熱、激しい頭痛、嘔吐、首の後ろの硬直などの症状が現れます。多くは後遺症なく回復しますが、入院加療が必要となることも少なくありません。次に、膵炎も注意すべき合併症です。膵臓に炎症が起こると、上腹部に強い痛みが生じ、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。重症化することは稀ですが、食事制限や点滴治療が必要になる場合があります。そして、女性特有の合併症として特に知っておきたいのが卵巣炎です。おたふく風邪を発症した成人女性の数パーセント程度に起こるとされ、耳下腺の腫れが始まった後、数日から一週間程度で下腹部痛や圧痛、発熱などの症状が現れます。片側の卵巣に起こることが多いですが、両側に起こることもあります。卵巣炎が将来の妊孕性(妊娠する能力)に影響を与える可能性については議論がありますが、一般的には不妊の直接的な原因となることは稀と考えられています。しかし、症状がある場合は婦人科医の診察を受けることが推奨されます。また、非常に稀ではありますが、重篤な合併症としてムンプス難聴があります。これは、ウイルスが内耳に影響を与えることで起こる感音性難聴で、多くは片側の耳に高度な、そして永続的な聴力障害を残します。発症は突然で、耳鳴りやめまいを伴うこともあります。残念ながら、現時点では有効な治療法は確立されていません。これらの合併症は、おたふく風邪の主症状である耳下腺の腫れが現れる前、同時、あるいは腫れが引いた後に発症することがあります。大人の女性がおたふく風邪にかかった場合は、これらの合併症のリスクを念頭に置き、体調の変化に注意深く対応することが求められます。疑わしい症状があれば、速やかに医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが、重症化を防ぎ、後遺症のリスクを最小限に抑えるために不可欠です。
おたふく風邪、大人の女性と合併症リスク