あれは数ヶ月前の朝、トイレットペーパーで拭くと、鮮やかな赤い血が付着していたのです。「えっ」と思わず声が出そうになりました。おしりからの出血なんて初めての経験でしたし、特に痛みやお腹の不調もなかったため、余計に不安が募りました。すぐにインターネットで「おしり 血 鮮血 痛くない」といったキーワードで検索してみると、痔の可能性が高いという情報が多く見つかりました。しかし、中には大腸がんの初期症状という怖い情報もあり、見れば見るほど心配になってきました。痛みがないことが逆に不気味に感じられ、これは一度ちゃんと診てもらった方が良いだろうと決意しました。問題は、何科を受診すれば良いのかということです。近所に肛門科を専門に掲げているクリニックがあったことを思い出し、まずはそこに電話で問い合わせてみることにしました。電話口で症状を伝えると、受付の方が「一度診察を受けていただくのが良いと思います」と丁寧に対応してくれ、予約を取ることができました。数日後、少し緊張しながらクリニックを訪れました。診察室に入ると、優しそうな先生が待っていました。まず、いつから出血があるのか、出血の量や色、痛みはあるか、排便の状況、食生活、既往歴などを詳しく聞かれました。私は、痛みは全くないこと、鮮やかな赤い血であること、量はそれほど多くないが数日前から続いていることなどを伝えました。その後、診察台に横になり、肛門の視診と指診、そして肛門鏡という器具を使った検査が行われました。少し恥ずかしさはありましたが、先生が「ちょっと見ますね」「力抜いてくださいね」と声をかけながら手際よく進めてくれたので、思ったほどの苦痛はありませんでした。検査の結果、先生から告げられたのは「内痔核ですね。初期の段階で、ここから出血しているようです」という診断でした。いわゆる「いぼ痔」の一種で、痛みがないことも多いとのこと。ひとまず、がんのような怖い病気ではなかったことにホッと胸をなでおろしました。先生からは、食生活の改善(食物繊維を多く摂る、水分をしっかり摂る)や排便習慣の見直し(長時間いきまない)、そして出血を抑えるための軟膏が処方されました。数週間、指示通りに薬を使い、生活習慣にも気をつけるようにしたところ、出血は徐々におさまり、今ではすっかり良くなりました。