長年、生活習慣病の診療に携わってきた医師として、脂質異常症を指摘されながら病院へ行くべきか迷っている方々に切実なアドバイスを贈ります。診察室で多くの患者さんが口にするのは、薬を飲みたくないから病院へ行かなかったという言葉です。しかし、現代の医療における脂質異常症治療の目的は、薬を飲ませることではなく、あなたの血管を生涯にわたって守り抜くことにあります。食事や運動の努力だけで数値が改善しないケースは多々あり、それは決して本人の努力不足ではなく、体質や遺伝、加齢による代謝の低下が深く関わっています。病院へ行くべきなのは、そうした個人の限界を超えた部分を医療の力で補うためです。医師が処方する薬は、いわば血管のサポーターです。特にLDLコレステロールを下げるスタチン製剤は、世界中で数億人の命を救ってきた実績があり、安全性も極めて高いことが証明されています。また、最近ではPCSK9阻害薬といった、より強力で新しい治療選択肢も登場しており、家族性などの難治性の高コレステロール血症であっても、正常値まで下げることが可能になっています。病院でのカウンセリングを通じて、今の自分のライフスタイルでどこに無理があるのか、どのような運動が最も効率的に脂質を燃焼させるのかといった、専門的な指導を受けることも重要です。ネット上の不確かな情報に惑わされ、高額で効果の定かでないサプリメントに頼るよりも、保険診療で確実な治療を受ける方が、経済的にも身体的にも賢明な選択と言えます。脂質異常症の治療を開始するのに、早すぎるということはありません。血管が柔軟性を保っているうちに介入することで、将来の心不全や認知症といった、血管の老化が引き起こすあらゆる不調を遠ざけることができます。もし数値が少しでも気になっているなら、相談だけで構いませんので、内科を訪れてください。そこで医師と対話し、自身の血管の未来を一緒に考えることが、何よりの健康投資となります。病院は病気になってから行く場所ではなく、病気にならないために行く場所であるという意識の転換が必要です。